国際頭痛分類をもとに「頭痛」を解説します

1.はじめに

頭こりラボは、頭部・顔面・首肩の凝りを専門的とする鍼灸マッサージ院です。
ご来院される患者さんの中には、それらに付随する「頭痛」でお悩みの方も少なくありません。

今ブログでは、日本頭痛学会の頭痛ガイドラインを元に「頭痛」を解説します。
こちらは頭痛全般を紹介する記事であり、すべての頭痛が頭こりラボの適応症状ではございません。

当院での適応となる頭痛は【こちら】に詳しく記載しております。

あわせてご参照くださいませ。

2.頭痛の種類

頭痛と一言に言いましても、厳密には14つに分類されます。

頭痛の種類と分類


国際頭痛分類第3版(ICHD-3)によると、頭痛は以下のように分類されます。

1一次性頭痛

  • 片頭痛
  • 緊張型頭痛
  • 三叉神経
  • 自律神経性、頭痛
  • その他の一次性頭痛疾患

2二次性頭痛

  • 頭頸部外傷、障害による 頭痛
  • 頭頸部血管障害による頭痛
  • 非血管性頭蓋内疾患による頭痛
  • 物質またはその離脱による頭痛
  • 感染症による頭痛
  • ホメオスターシス障害による頭痛
  • 頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口、 あるいはその他の顔面、頸部の構成組織の障害による頭痛または顔面痛
  • 精神疾患による頭痛

3有痛性ニューロパチー、他の顔面痛および、その他の頭痛

  • 脳神経の有痛性病変およびその他の顔面痛
  • その他の頭痛性疾患

比較的に耳にする機会が多い「緊張型頭痛」「片頭痛」は一次性頭痛に分類され、普段あまり耳馴染みのないものが二次性、その他に分類されます。

3.一次性頭痛と二次性頭痛の違い

分類の中でも14項目中、12項目を占める、「一次性頭痛」と「二次性頭痛」。
この2つの最大の違いは

一次性頭痛は生命の危険性が低い頭痛
二次性頭痛は生命に関わる疾患が原因となっていることがあるため注意が必要な頭痛

が挙げられます。

まずは、ご自身の頭痛がどの頭痛にあたるかを把握することは非常に重要です。

頭痛専門医のいる医療機関の受診が最適ですが、簡易的にSNNOOP10(スヌープ・テン)と呼ばれるチェック項目にて、生命に関わる「二次性頭痛」が疑われるかどうかをみることができます。

SNNOOP10は危険な頭痛を疑う特徴としてそれぞれ英語の頭文字をとったものであり、幅広い臨床現場で参考にされています。

SNNOOP10


1.【S】Systemic symptoms including fever
発熱を含む全身症状 

※風邪をひいた時にも発熱しますが、発熱に加えてくびが硬くなる「項部硬直」や意識がぼんやりする症状などが出現した時は要注意です。髄膜炎や脳炎の可能性があるため早期に検査を行う必要があります。

2.【N】Neoplasm in history
新生物の既往

※ガン・悪性腫瘍の既往がある方は、脳転移の可能性を考える必要があります。特にめまいやふらつき、嘔吐なども伴う場合はMRIなどの検査を行います。

3.【N】Neurologic deficit or dysfunction(including decreased consciousness)
意識レベル低下を含めた神経脱落症状または機能不全

※手足のしびれや麻痺、意識がぼんやりするなどの症状、いわゆる脳・神経の損傷によって発生する症状(神経脱落症状)がある場合は、脳の病気(脳卒中など)による頭痛の可能性を考える必要があります。たとえ軽い頭痛でも、半身の脱力やしびれがある場合には特に注意が必要です。

4.【O】Onset of headache is sudden or abrupt
急または突然発症する頭痛

※雷鳴頭痛(突然発症する頭痛、特に痛みの強さが1分以内にピークに達する頭痛のこと)は、くも膜下出血をはじめとする脳血管の病気が原因となって発症することがあります。この場合、脳の血管も含めて検査を行います。

5.【O】Older age (after 50 years)
50歳以降に発症する頭痛
二次性頭痛を発症しやすい傾向として、高年齢で基礎疾患(特に高血圧や糖尿病など)をお持ちの方が挙げられます。

6.【P】Pattern change or recent onset of headache
頭痛パターンの変化または最近発症した新しい頭痛

※いつもと異なる頭痛が発症した場合、もしくは頭痛パターンに変化が出た場合は別の病気の発症を疑う必要があります。

7.【P】Positional headache
姿勢によって変化する頭痛

※頭蓋内圧低下の症状であることもあり、脳脊髄液減少症などで発症することがあります。

8.【P】Precipitated by sneezing, coughing, or exercise
くしゃみ、咳、または運動により誘発される頭痛

※小脳や脳幹の病気などで発症することがあります。

9.【P】Papilledema
乳頭浮腫

※目の奥の視神経の部分です
※乳頭浮腫(眼球内にある視神経が腫れた状態)は、眼底鏡で眼の中を確認する必要があります。頭蓋内圧亢進を疑いますが、その場合視覚障害や嘔吐を伴うことがあります。

10.【P】Progressive headache and atypical presentations
痛み、症状が進行する頭痛、非典型的な頭痛

※非典型的な症状を伴い、頭痛が次第に強くなる場合には、やはり二次性頭痛が疑われます。

11.【P】Pregnancy or puerperium
妊娠中または産褥期

※ホルモン変化や血液凝固能亢進、また分娩時の硬膜外麻酔などにより二次性頭痛発症のリスクが高くなると言われています

12.【P】Painful eye with autonomic features
自律神経症状を伴う眼痛

※自律神経症状(流涙や結膜充血など)を伴う頭痛は、一次性頭痛である群発頭痛の症状でもありますが、眼科の病気(緑内障や角膜障害など)と見分ける必要があります。

13.【P】Posttraumatic onset of headache
外傷後に発症した頭痛

※頭部外傷により意識がぼんやりしているような時は、脳挫傷や出血が起きている可能性があります。
特に高齢の方は、受傷して数週間から数ヶ月経った後に慢性硬膜下血腫を発症することがあります。

14.【P】Pathology of the immune system such as HIV
HIVなどの免疫系病態を有する患者

※感染症などの発症リスクは免疫低下によって高くなります。

15.【P】Painkiller overuse or new drug at onset of headache
鎮痛剤使用過多もしくは薬剤新規使用に伴う頭痛

※薬(痛み止めなど)の使用過多により、元々ある頭痛が悪化する「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」二次性頭痛に分類されます。

一つでも当てはまる場合は二次性頭痛が疑われます。
頭痛を引き起こしている疾患が存在する可能性がありますので速やかに医療機関の受診をしていただく必要があります。

4.頭痛の割合


つぎに、頭痛を患っている方の割合について解説いたします。

頭痛の有病率


少し前のデータになりますが、1997年に北里大学医学部・内科が行った「日本における片頭痛の有病率」の全国調査をもとに考察いたします。

こちらは、15歳以上の4029人を無作為に抽出し電話と郵送によるアンケート調査した、日本で最初の科学的な頭痛疫学調査です。

慢性的な頭痛がある人は、全体数における約4割

そのうち、緊張型頭痛(22.3%)、片頭痛(8.4%)があわせて30.7%と、頭痛がある人を母数とするとこの2つの頭痛で約8割を占めることになります。


HIS(国際頭痛学会)基準に則り、回答者の頭痛を判断たところ、片頭痛患者においては、医療機関の受診率は非常に低く、69.4%は一度も頭痛のために受診したことがないと回答、自分の頭痛が片頭痛であると認識しているのはわずか11.6%だけであったと記されております。

5.考察

前述したように、緊張型頭痛と片頭痛は一次性頭痛に分類され生命の危険性が低い頭痛とされています。

しかしながら、著しくQOL(Quality of Life生活の質)を下げる要因となり、服薬のみで抜本的な解決に至っていない方が多くいらっしゃるのも事実です。

先ほどの調査によると、片頭痛患者の56.9%は市販の頭痛薬のみを使用していたとの報告もあり、適切ではない薬を「頭痛が出るたびに」または「効き目が弱い」という理由で用法以上に服薬することで薬剤の使用過多による頭痛へとつながる可能性もあります。

頭痛に関しては、生活に支障をきたす頭痛や長期間や高頻度に出現する頭痛は自己判断は避け、一度医療機関への受診をしましょう。

6.おわりに

頭痛の種類、一次性頭痛・二次性頭痛の違いや特徴について解説してまいりました。

鍼灸マッサージ院で「頭痛」を取り扱う際に、非常に重要なことは医療機関との連携と考えております。

当院では、頭痛専門医をご紹介させていただくことの可能でございますので、もし「自分の頭痛は医療機関へいくべきなのか」「どこの医療機関に行ったらよいかわからない」、「現在も医療機関にかかっているがセカンドオピニオンを受けたい」などのご相談にも乗らせていただけたら幸いです。

しかしながら、すべて医療機関へ丸投げではなく、私達自身も患者様の「頭痛」にしっかり寄り添えるように各種「頭痛」の性質や注意点、セルフケア、予防について日本頭痛学会総会の拝聴、日々最新の医学的根拠(*)に基づいた知識・技術のブラッシュアップ行っております。

頭こりラボでは、日本で唯一の頭痛にお悩みの方への専門的なアプローチができる鍼灸マッサージ院を目指します。

参考文献
* ICHD-3:国際頭痛分類第3版
* 日本人の頭痛有病率 Sakai F.et al., Cephalalgia 17: 15, 1997/片頭痛8.4%のうち、IHS基準に合致した片頭痛は6.0%、IHS基準に1項目合致しない片頭痛は2.4%/緊張型頭痛22.4%のうち、IHS基準に合致しない緊張型頭痛は6.8%、IHS基準に合致する緊張型頭痛は15.6%。